本記事は、麻雀のリーチに対する放銃点について、牌種や巡目、ドラの見え具合の要素を考慮し期待値を考察したものです。
私なりの推計方法で算出した期待値のため、あくまで参考値として捉えていただけますようお願い申し上げます。
私は麻雀歴18年程度で、今は引退していますが天鳳で5,000半荘程度対局し、鳳凰卓での対局経験もあります。最高段位8段ですが、だいたい6段~7段をうろうろしていました。
フリー雀荘での成績は、一般的なチェーン店ですが月間の平均順位2.28~2.41程度です。(場代高いのであまりプラスにはなりませんが、手出し無しで遊んでるぐらいの成績と捉えてください。)
かなり長い記事になりますので、お時間に余裕のある時に読んでいただければと思います。
それでは順を追って解説していきます。
牌種別ごとの当たり牌打点考察
まず初めに、役の出現率(天鳳の100万局分のデータから引用)と、放銃した牌でその役が成立するかどうか整理します。
上記の表から、偶然役と確定で判別できる役、役満(河が特殊になる可能性が高く、察知できる可能性が高いため)を除外します。
この表を利用して、当たり牌の種別ごとに翻数の期待値を推計します。
翻数の期待値推計
考え方は、下記の通りです。
放銃した牌により、役が確定するもの(三元牌など)、その牌だけでは役が確定しないものにパターン分けがなされます。
たとえば2萬で放銃した場合、入り目のメンツに役牌アンコが存在するケースもあります。
この場合は、雀頭と待ち牌のメンツ以外の3メンツに含まれていることを考慮して、放銃した牌以外のメンツにより発生しうる役については、発生率を60%として期待値を計算します。
三色同順は、3~7牌は3通りの順子、2,8牌は2通り、1,9牌は1通りしかありませんので、それぞれ2,8牌は3分の2、1,9牌は3分の1として計算しています。
タンヤオは、2,3,7,8牌の場合複合しないパターンがあるため、2,8牌は3分の2、3,7牌は4分の3として計算しています。
チャンタ系は、2,3,7,8牌の場合複合しないパターン(縦の受けも含む)があるため、2,8牌は3分の1、3,7牌は4分の1として計算しています。
字牌については、雀頭単騎待ちであれば複合する役(三色、一盃口など)があるため、そのパターンは5分の1を出現率に乗じています。
例外として三元牌と役牌により放銃した際、複合するケースはシャンポン待ちのみであるため、3分の2(単騎待ちとシャンポン待ちの割合が1:2のため)を期待値に乗じています。
この条件で推計した翻数の期待値は、下記の表です。
この表のtotalの値に、リーチの翻数である1を加えます。
結果を見ると、タンヤオ牌の期待値が高いことがわかります。(高出現率の役に複合しやすいため)
さらに、危険度の低い牌(オタ風、1,9牌)は打点も低くなる可能性が高いことがわかりますね。
ただし、この状態はドラと赤ドラを含んでいないものであるため、次にドラを考慮した期待値計算を行います。
ドラの状況を考慮した翻数の期待値推計
まず初めに、ドラが場に1枚も出ていない状況で流局までいった場合に、手牌にドラが含まれている枚数とそれぞれの確率から期待値を求めます。
ドラの枚数は、表ドラと赤ドラ4枚を含む8枚のパターンと仮定しています。
次に、裏ドラが乗る確率を推計します。
推計条件は、手牌は10種類の牌が存在し、全ての牌が裏ドラになると仮定し、1枚乗る確率を求めるものとしています。(34分の10)
30%弱で裏ドラが乗る計算となりました。
この期待値を先ほどの牌種別の翻数期待値の表に加えます。
ただし、当たり牌のメンツに赤ドラが含まれない牌については、赤ドラ分を補正した期待値としています。
結果を見ると、あきらかにリーチの平均統計期待値(親8,000点、子6,000点)より高いため、放銃した巡目と見えているドラの枚数を考慮した計算を行う必要があると考えました。
まず、ドラが見えている枚数別に期待値計算を行います。
当然のことながら、ドラが見えるにつれて期待値が低下することになります。
この表を利用し、ドラの切れた枚数を考慮した牌種別の翻数期待値を求めます。
上記の結果となりました。
次の章では、打点の期待値計算を行います。
ドラ切れ枚数・巡目別の打点期待値推計
打点の概算として、数牌は30符、字牌は40符として計算します。
期待値の平均が「科学する麻雀」のリーチの平均打点に近しい数値となっているので、妥当な推計ができているものと判断しました。
この表を見てみると、ドラが3枚以上見えていると期待値的には3翻以下である可能性が高いようです。
また、ドラが全く見えていない状況だと、放銃すると満貫は覚悟しないといけないことがわかります。
逆にドラが多く見えている時は相手の想定打点が低い可能性が高いため、状況によっては放銃を恐れず全ツ気味に打ったり、好形イーシャンテンからの押し返しを行うことが良い判断となりますね。
興味深い点は、ドラがたくさん見えている状況だと役牌の方が4,5,6牌で放銃した時より痛手になるところです。
上記の状況では赤ドラが絡まないのと、特定役が複合する可能性が高まるのが要因かなと思いました。
次に、巡目ごとにリーチ者の手牌にドラが含まれている確率からドラ期待値を求めます。
巡目が進むとドラが含まれている可能性が上昇するため、後半のリーチほど打点が高い可能性があるという結果が読み取れます。
さらに、この推計の最終目標である牌種別・巡目別・ドラ切れ枚数別の放銃時の打点期待値を各表をベースに推計します。
推計の前提条件として、赤ドラが絡まない牌はドラ期待値を補正し、1巡目はダブルリーチのため1翻追加しています。
1,9牌の場合(放銃点期待値)
★放銃点の期待値表
そんなに打点高くないですね。
昔から言われているセオリーが数学的にも正しいことがわかります。
2,8牌の場合(放銃点期待値)
★放銃点の期待値表
1,9牌と比較すると少し打点が向上していますね。
3,7牌の場合(放銃点期待値)
★放銃点の期待値表
2,8牌より打点がかなり高くなっています。
特にドラが見えていない状況だと1,000点ほど高くつく計算ですので、打点的にもこのあたりからの中張牌は危険です。
4,5,6牌の場合(放銃点期待値)
★放銃点の期待値表
放銃する確率も高く、放銃点も高いため、4,5,6牌は無暗に打ち出してはいけないことが再確認できました。
三元牌の場合(放銃点期待値)
★放銃点の期待値表
中張牌と比較すると打点は下がりますが、ドラ切れ枚数が増えても期待値の低下が緩やかである点に注意が必要です。
ドラが多く見えている状況では、少し警戒心を強めにする方がよいです。
風牌の場合(放銃点期待値)
★放銃点の期待値表
ほぼ三元牌と同様の結果となりました。
オタ牌の場合(放銃点期待値)
★放銃点の期待値表
どのシチュエーションでも期待値は満貫に届かず、放銃点は低くなります。
当たり牌になる確率も低く、打点も低いため、安パイとしては最適ですね。
しかしながら、裏をかいて単騎待ちで狙われやすい牌ではありますので、捨て牌選択の際には相手の河を見て総合的に判断することが重要です。
全牌種平均値(放銃点期待値)
★放銃点の期待値表
太枠内かつ背景色が青っぽいゾーンが、実践上出現率の高いケースです。
また、放銃時の牌種を期待値の低い順に並べると、
オタ風<1,9牌<2,8牌<3,7牌<風牌<三元牌<4,5,6牌となります。
ただし、ドラ切れ枚数が2枚以上になると、4,5,6牌より風牌、三元牌の方が放銃点の期待値が高くなることに注意が必要です。
放銃点期待値の公式(簡易版)
先ほどの表を用いて、状況に応じて放銃点期待値を計算する公式を考えてみました。
計算式を簡略化している都合上、統計の数値とは最大で500点前後誤差が生じますので目安程度に捉えてください。
放銃点期待値の公式:(4,800-800x+50y)
xはドラ切れ枚数、yは巡目を代入してください。
例えば10巡目でドラ切れ枚数が2枚、という状況であれば、
4,800-800*2+50*10=4,500
概ね4,500点ほどの放銃点となる、と計算結果が得られます。
捨て牌に迷ったときは、上記の公式を利用して放銃点を推測しながら判断を行ってみてください。(私は実戦で利用しています)
まとめ
少々長い記事になりましたが、いかがだったでしょうか。
麻雀は確率の収束に膨大な回数を必要としますので、統計的に正しい選択がすぐに結果として現れない場合もあります。
しかしながら、常に期待値の高い選択を取ることで実力が向上していき、成績も向上していくものですので、根気強く冷静に打つことが大切です。
このページに自力で訪れたあなたは、少なくとも自らの麻雀の技術を向上させようという気持ちがあると私は思います。(麻雀好きじゃないとこんなマニアックな記事読まないと思うので)
同好の士として、お互い更なる高みを目指して頑張りましょう。
また、別記事で牌種別に放銃率等を考察していますので、こちらもぜひお読みください!
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